小説

「霧のむこうのふしぎな町」(柏葉幸子/講談社)

煽りと解説で言ってることが違ってるという、大人の事情臭がする作りになっていますが、中身は純粋に児童文学。小学生ぐらいに読むとまたいろいろ思うところがあっただろうなと。 王子の不器用全開な恋愛の仕方には偉大なる昭和を感じます(笑) ああいうの…

「12月のベロニカ」(貴子潤一郎/富士見書房)

長い間読書を趣味としていると、ごくたまに「引きこまれる」ということがある。目を通したが最後、ほとんど顔をあげることなく終わりまで読みきってしまう現象のことだ。これをオイラは、「一気読み」と勝手に名づけている*1。最も近しい一気読みの例として…

「ダブ(エ)ストン街道」(浅暮三文/講談社)

この世で最もメフィスト賞らしくない話――と言われているかどうかは知りませんが、明らかに他の受賞作と毛色が違うのは確か。なんせガチのファンタジーなのだから。 ひどい夢遊病のせいで行方不明になった彼女を追いかけて、秘境ダブ(エ)ストンに上陸した主…

「シルフィ・ナイト」(神野淳一/メディアワークス)

乱暴にまとめると、戦場で軍人同士がイチャラブする話。 この手の戦場イチャラブ話というのはいろいろと人によって意見が分かれるらしく、「すぐそばで命の奪い合いが起きてるってのに、ふたりだけでイチャイチャ世界にこもってんじゃねえ」との反発もたまに…

「クロスオーバー 純白の蟲鎧」(伊東京一/エンターブレイン)

読了。進化した巨大アリさんたちと戦う異惑星の話。 オイラも大きな虫は苦手なので、作中での恐怖感は痛いほどわかりました(苦笑) 存在が苦手っていうんじゃなくて、殺すのが苦手なんだよね。大きい虫。4センチを超えてくるともうキツい。箸で摘んで窓か…

「夢の樹が接げたなら」(森岡浩之/早川書房)

読了。デビュー作をはじめとする短編を集めた初期作品集。文庫での発売は02年だが、初出は99年にハードカバーとして出ている。当時浪人生で星界ファンだったオイラも当然そのハードカバーの存在は認識していたが、その時分はまだ1500円を越える本を…

「ホラー・アンソロジー 悪夢制御装置」(篠田真由美・岡本賢一・瀬川ことび・乙一/角川書店)

ミステリ倶楽部のアンソロ本、再び我が奥地より発見さる。とりあえず「この巻以外は買ってないはず」という1年ほど前の発言を取り消して謝罪したい。 しかも出てきたのはホラーアンソロ。 なにを隠そうオイラはホラーなるジャンルがあまり好きではない。先…

「星虫」(岩本隆雄/朝日ソノラマ)

10年間表舞台から遠ざかっていた作者が活動再開するにあたって加筆再刊されたデビュー作。再刊されたのは2000年ですが、確かにその直近10年間の社会情勢、風俗などがちゃんと踏まえられている。携帯電話とか作中で出てきてるし。 まあそんな本を6年…

「ぼくがぼくであること」(山中恒/角川書店 isbn:4041417015)

読了。少年ドラマシリーズ原作連続攻略だぜ、という勢いで手を出す。流れに乗ってるときはそのまま乗っとけと。 とにかく母親の不快感がひどくてなかなかイラっとくるものがありましたが(しかも最後までいっても改心してないし)、おかげで読み進められたよ…

「夕ばえ作戦」(光瀬龍/角川春樹事務所)

読了。表題作「夕ばえ作戦」と「暁はただ銀色」の2編を収録した復刊本。昭和40年代のジュヴナイルSFなのですが、いま読んでもまったく高揚感というものは変わりなく、「物語の力」の強さを感じずにはおれません。たぶん買ってから5、6年積んでたと思う…

「黒闇天女にご用心」(伊東京一/エンターブレイン)

読了。貧乏ネタもコメディとして悪くないかなと思う今日このごろ。オイラ自身、貧乏のもたらす逆境パワーをどこか無邪気に信じてるし。

「こんなに緑の森の中」(谷山由紀/朝日ソノラマ isbn:425776855X)

肩を壊して野球名門校を中退した男の子が、挫折を吹っ切って再び前を向くまでを丹念に描いたジュヴナイル。谷山さんの話はこれ含め2冊しか読んだことはないのですが、2冊とも高校生の落ちこみがちな青春のうろを書ききっていて。それはとても痛々しいんだ…

「愚者のエンドロール」(米澤穂信/角川書店)

現在すでに角川文庫から新装(中略)、上の書影(中略)。オイラの読んだのは高野音彦氏のイラストが表紙を飾るスニーカー・ミス(中略)。いわゆる黒(検閲削除) ミステリに対して特別な何かを持っていないオイラにとっては「氷菓」のほうが親しみやすかっ…

「氷菓」(米澤穂信/角川書店)

読了。現在すでに角川文庫から新装版が出ていて、上の書影もそれに準じたものだけど、オイラの読んだのは上杉久代氏のイラストが表紙を飾るスニーカー・ミステリ倶楽部版。いわゆる黒れk(検閲削除) まあ5年ぐらい積んでたわけで。ウチではそれぐらいのこ…

「マージナル・ブルー 空曜日の神様」(水落晴美/メディアワークス isbn:4840228922)

なにげなく読み出してみたら、イラストが「かのこん」の人と同じでビビる。この絵師さんの、女の子の眉の描きかたがオイラは好きだ。 個人が認識することによって「世界」は確定するのだという、まあちょっと民俗学な話。 未知を既知に取り込むことによって…

「夢界異邦人 硝子の蝶」(水落晴美/メディアワークス)

夢界シリーズの3巻目。発刊から5年経ってますが、続刊が出ていないということは、まあ……そういうことなんでしょう。 個人的にはすごく好きなんですけどねえ。特に後半にかけてサスペンス的な面白さがあると思う。 ただ、自分に問いかける意味も含めてあえ…

「シンフォニアグリーン 千年樹の町」(砦葉月/メディアワークス)

読了。シリーズ2冊目。ただし書いたのはこちらが先とのこと。 これ1冊でひとつの長編でしたが、編集さんが短編連作を書かせたのが納得いく感じでした。起伏のつけかたが長編という感じではないんですよね。編集さんもプロということです。

「シンフォニアグリーン」(砦葉月/メディアワークス isbn:484022014x)

不詳巻島、カスワナビのくせに、小説書きのプロの知り合いがいたりすれ違ったりしていたことが多々ある。まあ長くネットやってれば、すれ違いぐらいはあるかもだけど…… この作者砦さんも、そんなオイラとすれ違ったプロのひとり。 デビュー作らしいたどたど…

「ふわふわの泉」(野尻抱介/エンターブレイン)

化学+学園小説だと思って読みだしたら、一気に宇宙にまで出てファーストコンタクトまでやっちゃってました。 うーん。いろいろな意見はあるんでしょうけど、俺はこの速度感というか、テンポの速さは好きですよ。重厚にならないために、こういう感じになって…

「食前絶後!!」(ろくごまるに/富士見書房)

12年前にこの世に生を受けた、問題作。巻末解説において賛否両論あったと書かれていますが、それがなるほどと頷ける怪作。当時ネットはまだ発達していなかったけれど、もしネットがあったらおかゆまさき的な扱いを受けていたかもしれない。 固有名詞や実在…

「星界の断章」1巻(森岡浩之/早川書房)

(早川文庫JA)" title="星界の断章 (早川文庫JA)" class="asin"> 読了。 委員長の話が好き。

「天使のベースボール」(野村美月/エンターブレイン)

2年前、みやびさんから「へたれ流され系主人公モノとしてこんなのもあるよ」と紹介されて。それから1年後、思い出して購入。 そして読んだのは昨日。……どんだけユルい時間のなかで生きてるんだろうね、俺は。おかげで当時とは俺の意識が変わっちゃってるよ…

「とらドラ!」1巻・2巻(竹宮ゆゆこ/メディアワークス)

勢い余って新シリーズまで読みましたよアーハー。 いやー、たけゆゆさんは恐ろしい。なにが恐ろしいかって、ラブコメのセオリー無視してきて、それをちゃんと面白くしてるところですが。 なんでラブコメに出てくる女の子は、デフォルトで主人公のことを好き…

「火目の巫女」3巻(杉井光/メディアワークス)

さあて、なにから話しましょうか。やっぱり人物的なことから話さないとだめかな。 実は今回、3巻を読み終えてすぐ、杉井さん本人にチャットで確認をとりました。『3巻で一番変化したのは、豊日でいいんですよね?』と。 なんでこんな確認作業をいちいちし…

「わたしたちの田村くん」1巻・2巻(竹宮ゆゆこ/メディアワークス)

周回遅れの人生を生きるオイラがようやく読んだ、昨年度の超話題作。 正直、あーきっといわゆるザ・ラノベな感じのラブコメなのね、程度に思って読みはじめた。 ――甘かった。かなり甘い見通しだった。ボッコボコに心を殴られた。 そしてふと思った。2ちゃん…

「かのこん」4巻(西野かつみ/メディアファクトリー)

いやー、今回は短編集ってことで、気軽に読めましたわー。べつに構成とか気にせんでいいわぁと。ほんとにただダラダラと読んでしまった。しかしサリンジャーのすぐあとに読んだので、かなり頭クラクラした(笑) ぶっちゃけ失敗。みやびさんは火目1巻と同時…

「キャッチャー・イン・ザ・ライ」(ジェローム・デイヴィッド・サリンジャー(訳村上春樹)/白水社)

もはや我が積読マウンテンからいかなる本が発掘されようとも驚きはない。はっはー。今回は3年前の地層からこんな本が出てきたりしました。 いわゆるアメリカ文学史上に輝く超有名作なわけですが……っていうかむしろ「お前まだ読んでなかったのかよ」という批…

「狼と香辛料」2巻(支倉凍砂/メディアワークス)

読了。はっきり言ってどうなるか不安いっぱいだったのですが、杞憂だったようです。ちゃんと面白かった。 ピンチ性というか、カタルシスに向けての演出・構成も1巻よりよかったしね。取引上の失敗からピンチになるという展開は商人らしさがあるというか、主…

「かのこん」3巻(西野かつみ/メディアファクトリー)

バカ度とストーリー性が両方増してきたという、まあ普通にいい3巻でした。主人公もついに射精したしね。直接陰部に激しい刺激を与えないでも出ちゃうのは若さの証拠です。いいなぁ(爆) で、今回は構成分割やめときます。理由はきっちりしたかたちをしてな…

「奇蹟の表現」(結城充考/メディアワークス)

最近、ここ2年で最も積読の消化がいい感じです。逃避行動なのだろうか。自分でフィクションを考えようとすると、能動的な思考が求められ、そしてそのたびにためらいの力が生じて思考が進まなくなってしまうのですが。ただ本を読むだけならわりと受動的にで…