「星虫」(岩本隆雄/朝日ソノラマ)

星虫 (ソノラマ文庫)

 10年間表舞台から遠ざかっていた作者が活動再開するにあたって加筆再刊されたデビュー作。再刊されたのは2000年ですが、確かにその直近10年間の社会情勢、風俗などがちゃんと踏まえられている。携帯電話とか作中で出てきてるし。
 まあそんな本を6年積んでからようやく読むオイラもオイラですが(汗)


 SF不変のテーマである「人間の進化過程における地球との関係性」を、星虫なる寄生生命体との関わりを通じて書ききった、力感あふれる話。星虫が得体のしれない外宇宙存在であるせいで、どうしても人類(主人公)側が受動的に成らざるをえないという難しい構成を、主人公たちの主張の一本気さで乗り切っています。力技ではありますが、受動的ストーリーを書く上ではひとつの方法といえるのではないかと。ふむふむ。
 夢の公言とか信じることとか、いまのオイラにはいろいろ耳が痛かったですけど……やっぱりね、こういうキラキラした/まっすぐ上を向いて歩いていくことのまぶしさを書いた話ってのはね、読むのに適切な時期というのがあると思うんですよ。いまのオイラにとってはもう目がくらみそうで。