「とらドラ!」1巻・2巻(竹宮ゆゆこ/メディアワークス)

とらドラ!1 (電撃文庫) とらドラ〈2!〉 (電撃文庫)

 勢い余って新シリーズまで読みましたよアーハー。
 いやー、たけゆゆさんは恐ろしい。なにが恐ろしいかって、ラブコメのセオリー無視してきて、それをちゃんと面白くしてるところですが。
 なんでラブコメに出てくる女の子は、デフォルトで主人公のことを好きな子が多いか――考えたことありますかみなさん。
 それはですね、女の子のかわいさを書くのに一番手っ取り早い方法が、「主人公のことを好きにさせる」ことだからです。正確に言うと、好きだからこそする振る舞いを、主人公=読者に向かって直接見せるということですね。そういう振る舞いって、みんな誰がやってもいじましいし、かわいくなるもんなんですよ。
 また、そもそも人間のメカニズムとして、自分のことを好いている相手のことはそんなに嫌いにならないという法則もありますし。べつにハーレムが男の理想だからというだけでみんなに好かれてるというわけではないのですよ。
 でもこの話は、あろうことか、主人公とヒロインがそれぞれ別の相手を好きだったりするんですよね。いやあ、漫画ではよくこういう多角的な関係の話はありますけど。ラノベではどうでしょう、そんなにはないんじゃないですかね。小説媒体だと、ひとりに同化して読むことの多いですから。多角化は多視点的な思考を読む側に求められるので、一段階、階段が上がるわけですよ。そこで読み手にある種の力量を求めてしまうことにもなりかねないので、なかなか難しい。
 それを平然とやりきるたけゆゆさんはやっぱり恐ろしいわけです。