「シルフィ・ナイト」(神野淳一/メディアワークス)

シルフィ・ナイト (電撃文庫)

 乱暴にまとめると、戦場で軍人同士がイチャラブする話。
 この手の戦場イチャラブ話というのはいろいろと人によって意見が分かれるらしく、「すぐそばで命の奪い合いが起きてるってのに、ふたりだけでイチャイチャ世界にこもってんじゃねえ」との反発もたまに耳にする。昔オイラの知りあいはそういう理由で「サイカノ(最終兵器彼女)」を嫌っていた。
 このへんはいわゆる、「戦争」における「国家」と「個人」はどのような関係性でいるべきかという思想の問題もあるんだろう。戦争時においては公共性が優先されるべきで、私的なことはいっさい公に提供されるべき――という考えかたが現在一般的には、支持されているように思う。もともと日本人は、自分を殺してマクロな利益に貢献するの好きだしね。「滅私奉公」という言葉も在ることだし。
 それはそれ、思想としては理解できるんだけど。ただまあ、フィクションを幅広く楽しむという意味では特有の思想に拘泥してないほうがいいわけで。オイラはべつに、戦争や戦場を「緊張感を持たせるための単純な装置」として扱われても特に嫌悪は感じない。……もしオイラが戦中育ちだったりしたら、きっと違った考えを持っていただろうけど。


 戦闘機のことはさっぱりよくわからんオイラですが、この話は「恋する女の子はかわいい」の一点押しでも充分読めたので、まあよかったです。
 希少能力ゆえに孤独で居場所がなかった軍人女の子が、配属先で居場所を見つけ、恋に落ち、しかし能力の希少さゆえにずっと一緒には居れない、いつかは別れなければならない――だから想いを必死に秘める……。
 こう、要素的にとらえていくと、なんか応用利きそうで面白いですよね。これもベタっちゃベタなんかもしれませんけど。まあベタすら満足に書けてないのがオイラですし。


 しかしあれだ、オイラもすっかり変な読みかたをするようになってしまった。というのも今回読んでて「これどっかで鬱展くるんじゃないか」とずっと不安になりっぱなしだったんですよ。構えすぎというか。
 単純にハッピーエンドを信じられていたピュアなオイラはどこへ消えたのだろう。