「夕ばえ作戦」(光瀬龍/角川春樹事務所)

夕ばえ作戦 (ハルキ文庫)

 読了。表題作「夕ばえ作戦」と「暁はただ銀色」の2編を収録した復刊本。昭和40年代のジュヴナイルSFなのですが、いま読んでもまったく高揚感というものは変わりなく、「物語の力」の強さを感じずにはおれません。たぶん買ってから5、6年積んでたと思うんですけど、いやあ、運よく最近山のなかから発見されてよかった。
 まあSFのことはあまりオイラ語れないので、「夕ばえ作戦」のキャラクタと破天荒さについて少しだけ。
 「夕ばえ作戦」は、中学生がタイムマシンを手に入れて、江戸時代に飛び、忍者同士の乱戦に巻きこまれる――という話なのですが。オイラがびっくりしたのが、「現代の中学生は江戸期の忍者と同等以上の体格・運動能力がある」という設定なんですよ、これ。
 最近は、フィクションに限らずリアルの世界においても「スペシャリスト」がもてはやされる時代ですので、こう、裏社会のスペシャリストというイメージが定着している「忍者」をこんなふうにしちゃうと、人によっては「はいはいありえないありえない」という拒絶反応が出てしまうでしょうけど……。オイラは可能性のひとつとしては充分面白い設定だなぁと感じました。こと体格については栄養状態とか全然違うし、いまの人間のほうが断然大きいだろうしね。ただ習熟・訓練が必要な反射神経とかになると、さすがに忍者のほうが上だろうなぁ。
 でもそういう設定の破天荒さを置いても、充分面白いんですよね。この話。現代の文明利器で忍者を倒すという、カルチャーギャップなネタがなにより親近感あるし。現実から離れすぎず、近すぎずの微妙な距離感覚があって、それがかえって冒険魂を刺激するというか。「おれでもできそう」みたいな感覚を生むというか。
 キャラクタについて触れると……敵方である風魔頭領の妹、風祭陽子ですか。いわゆる美少女忍者。しかも13歳。それもかなりの手練。これだけでオイラにとってはベリーナイスなのですが(19ぐらいのころ、美少女忍者の妄想に勤しんでいた過去もあるし。予備校の講義そっちのけで(苦笑))、極めつけは、主人公と揉みあってるうちに現代に飛んじゃって、そこで女の子らしい生活とかいろいろやってるうちに主人公にベタ惚れしちゃうというあたり。昨日の敵は今日のラブですよ奥さん。ご飯8杯はいけます。まあ、いまとなってはベタっちゃベタですが。こう、冷厳だった女の子が恋愛に転ぶというのが、オイラ相当好きみたいです。