0-01-01から1年間の記事一覧

クロッシングマインド 第1章

1 夕方の駅前は、家路を急ぐ人であふれていた。 ロータリーのバス停は列を伸ばし、その合間を、スーパーの袋を提げたおばさんや、女子高生の団体が通り抜けていく。 バス停のベンチに、高校生のカップルが座っていた。お互い手を握りあって、楽しそうに笑い…

小説置き場 トップ

管理人がこれまでに書いた小説のなかで、公開してもいいかと思ったものが置いてあります。 基本的に、下にいくほど古く、上にいくほど新しい作品が配置されています。 なお、枚数はすべて400字詰め原稿用紙で換算しております。 ずっとずっと、遠くまで …

クロッシングマインド 第2章

2 遠くのほうで、みみずくの低い鳴き声がした。 亮介は首を木の根に預けて、頭上を見上げていた。枝葉はその影を複雑に入り組ませ、夜空をバックに奇妙な模様を描いている。 規則正しい寝息がそばから聞こえている。 眠気を潰すため、亮介はまぶたをつねっ…

兄妹だもの

「ごちそうさま」 そう言って、まだシチューが半分以上残っている皿を、祐樹は流しへ運びだした。 朋香はそれを、怪訝な目つきで眺める。 「ユーキ、はらいた?」 「そうじゃないけど。あんまり」 手を顔の前で振って、祐樹は否定する。祐樹の眼鏡に、肌色が…

クロッシングマインド 第3章 その1

3 楕円形の月が出ていた。雲ひとつない紺青の夜空に浮かんで、光条を地上に放っている。 フェンスに寄りかかって座っている亮介の目は、確かにその月を捉えていた。 月から視線を下ろせば、そこには無数の自転車があった。あっちではきっちり並べられている…

クロッシングマインド 第3章 その2

入口には〝営業中〟と書かれた木の札がかけられていた。向かって右手に赤い暖簾、左側が青い暖簾――男湯になっている。 亮介は暖簾に手を差し、奥を覗こうとして――そこで肝心なことを思い出した。 「そういや、タオルとか石けんは買わなきゃいけないんだよな…

クロッシングマインド 第4章 その1

4 空は、文句のつけようのない見事な秋晴れだった。まだ薄く白んでいるものの、その青の深さははっきりと見てとれる。太陽も、いつも通りに東から顔を出してくる。 昨日と同じ、変わらない朝の景色。 けれど、人の心は、ずっと同じではいられない。 亮介は…

クロッシングマインド 第4章 その2

「間にあったか!?」 叫びながら、亮介は目を凝らして林の奥――有希たちの姿を見つめる。 敵は吹っ飛んで、木の幹に体を激突させていた。運よく当たってくれたらしい。ガーティスはさらにそこへ、第二撃を投げつける。今度は大きく外れて、敵の上の枝をこそぎ…

クロッシングマインド 第5章

5 夜の風に、砂ぼこりが巻き上げられている。月の光にそれはさらされ、まるで砂金のようにキラキラして見える。もっとも、亮介はそれが目や口に入ってしまうことを心配してしまうのなれど。 しかしガーティスは、口も目もかばうことなく、じっと青黒い空を…

クロッシングマインド 終章

淡いオレンジ色の光のなか、電車がゆっくりと駅から離れだした。遮断機の向こうを、草緑色の車両が駆けていく。 すべてが通り過ぎると、踏み切りは甲高い声を出すのを止めた。縞々の手を振り上げる。待ちかねたように、その下を車や歩行者が渡っていく。 そ…

ランナーズファン

チャイムが鳴っても、楕円の白線の上を走る真人の足は緩まなかった。ひとりで黙々と走り続ける。真昼の太陽に照らされたグラウンドは白く輝いて、真人の目を細めさせる。真人の呼吸と足音だけが、グラウンドに響いている。 六時間目がいま終わったばかりの第…

クロッシングマインド あらすじ

亮介は、幼なじみの有希のことが好きだった。だが臆病なせいで、姿を見るたびいつも逃げてしまい、告白なんて夢のまた夢。 そんな二人の体に、宇宙人に侵入する。亮介は宇宙人に協力したくなかったが、自分たちの身も危険にさらされていると知る。有希を護ら…

UNKNOWN

里美がマンションの三階にある家に着くと、ドアの前に花束が置いてあった。見事な赤いバラだった。 ――? 心当たりがない。 ……疲れのせいで幻覚を見ているんだろうか。 たしか今日は、鞄を落として困っていたお爺さんを手伝って一緒に探しまわって、その後は…

滅びゆく街のなかで

――まったく、レムのやつ、どこに行ったんだ…… 心の中でぼやきながら、僕はシティ中枢の機関部区画を急いでいた。薄ぼんやりとした明かりに照らされた通路は、右に左に別れ道を生み出しながら、奥へ奥へと伸びている。こんなところまで来たのは久しぶりだ。 …

危機対応マニュアル

レベル1(一般閲覧者の気分を害するおそれのある状態) 対応:コメントの削除を警告します。 レベル2(一般閲覧者、及び管理者の気分を確実に害している状態) 対応:削除を実行し、警告に従わない場合のIP及びユーザー規制を通達します。 レベル3(場が…

沿革

2004-06-22:「飛行実験エリア」として発足。 2005-05-15:「実験飛行ジェネレーション」に改称。 2006-02-03:「実験飛行」に改称。

このブログについて

このブログは、へたれで臆病と仲間内で評判の管理者が、日々感じたことを世界に流している場所です。 管理者の文章能力は、そう高くありません。ネットを探せば、管理者より優れた感想・論評を書く人に簡単に巡り会えます。 それゆえ当然、偏った見識に基づ…