「Dark Seed」3巻(紺野キタ/幻冬舎)

Dark seed 3 (バーズコミックス ガールズコレクション)

 完結編。
 エルバートに誘われてリジーが暗黒面に堕ちたあたりから、本領全開というか。人が本来誰しも持っている心の汚い部分を吐き出させて、ぶつかりあっていくというのがなにより美しい。
 まあただ、ちょっと「大人になれ」というメッセージが露骨すぎたきらいは感じますけど。エルバートの動機とかほぼ駄々っ子レベルだったからな……。
 「誰も自分をわかってくれない!」という若者普遍の問いかけには、大別して、「そんなことはない、みんなほんとはキミのことわかろうとしていたんだよ」か「わかろうとしてくれるほど、世界はキミに関心は持っていない」という、どっちかの系統の結論が用意されているわけですが。
 人が理想として欲しがるのは前者なんですよね、やはり。物語を読んでいてもだいたい前者が多い。当たり前のことですが、自分のいいとこ悪いとこなにもかも理解してくれてて、その上でつきあってくれる人がいたらそれは最高に幸せなことです。それくらい、みんなコミュニケーションの軋轢に疲れている。
 でもこのフィクションではない、現実世界ではだいたい後者の結論で説明したほうが適切に済むことが多いんですよね……悲しいことですが。多少の珍行動だって奇異の視線は受けますが、それ以上のこと、声をかけられたりとか怒鳴られたりということはない。
 エルバートの場合、害悪の根源として協会に常に追われ目をつけられる日々だったので、後者の論法で自分を抑えることはできなかったんですね。だから「わかってくれないやつらは、排除するしかない」という方向へ行くしかなかったのですが。


 しかし、セレストとアルジーがお互い照れ照れになるのがもうかわいいかわいい。
 もともと(男女を問わず)同性同士の関係性を書くことがほとんどだった紺野さんが(いや、今作もメインはセレスト×クリスで女同士なんだけど)、男女ネタに踏みこんで来てくれているのはちょっと嬉しいですね。