「リビスの翼」(円山夢久/メディアワークス)

リビスの翼 (電撃文庫)

 仮想の19世紀を舞台にしたファンタジー
 翼を失った鳥類人種と機械文明の力で栄華を誇る人間の対立、そのなかで鳥人の少女と人間の少年の間でかわされる思慕……かつて似たような設定の話を書いた者として、こういう話が嫌いなわけありません。もちろん大好き。
 孤児同然だった少年が父親が秘していた血統の因縁によって領主の跡取りとして迎えられる冒頭から、一気に謎・謎・謎で畳みかけていく構成もまあ好き。能動動機がないのでほんとはつらいのかもしれませんけど、個人的には、わけのわからないところへやってきた主人公の心情と同調しながらすんなり読むことができるので、謎、というかわからないことを提示されても、それがなんなんだろうと気にすることができる。というか、主人公の気にすることしか「謎」として設定されてないわけですな。これは地味ではあるけどよく見習わないといけないところ。
 ただ設定が多すぎたせいでオチでばたついたのがもったいないというか。
 この手の種族対立モノはやっぱり好きなんでね、そのうち書くこともあるかもしれません。ファンタジーという形式では書かないでしょうけど。