「眠り姫」(貴子潤一郎/富士見書房)

眠り姫 (富士見ファンタジア文庫)

 「ベロニカ」がよかったので余勢を駆って購入読破。――余勢と言うには時間たちすぎですが(苦笑)
 しかし受賞作の次に出すのが短編集ってどうなんだろう。
 題材より、技量の高さにひたすら翻弄させられました。もちろん心地いい翻弄ですが。説明文くさくなりきらずにあれだけ情報量を詰めていくのは、実際かなり難しいと思います。どの話も全般に濃く、読む速度は普段と変わらないのに充足感だけはずっしり感じるという。
 収録作のなかでは『さよなら、アーカイブ』が一番好きですかね。この手の連綿と時間を越えて続いてくいたずらって、妙に心をくすぐられます。図書室の蔵書のあるページに、何年にもわたって落書きが書き加えられてたりだとか。大学の図書館なんかだと、文章に線が引かれている本をいくつも見かけましたね。1回生や2回のときの課題レポートなんて毎年同じようなものですから、参考に使われる本も当然被ってくるという。
 あと、これは予備校でのことなんですが、なんとはなくオイラ机に落書きしたんですけど、そしたらそれに返信があって。それからしばらく秘密文通みたいなことをしたこともありますね。中身は全部競馬ネタだったんですけど(笑) せめて恋愛相談とかだったらフラグに変わってたんでしょうか……