「かのこん」2巻(西野かつみ/メディアファクトリー)

かのこん〈2〉はじまりはじまり (MF文庫J)

 相変わらず次巻が出るころに感想書くのであった。例によってネタバレしまくりなので未読のユーはゴーホームしちゃいなよ!

  • はやくヤりたいヒロインと、それを拒む主人公。理由は不安だから。こんなに愛されていいのかと。
  • オオカミ兄妹との出会い。主人公に会いに来たという目的が示唆される。
  • 兄妹の学園転入。妹に惚れられる主人公。そして兄はヒロインの元相方。
  • ヒロインとオオカミ妹で板ばさみの主人公。ヒロインの嫉妬。
  • 兄を問い詰めるヒロイン。主人公が、ヒロインの影響で妖怪化が進んでいることが明らかになる。
  • 兄の行動により、主人公、兄とヒロインの仲を怪しむ。というか嫉妬。
  • ヒロインに、妹に対する嫉妬に触発されて、主人公はヒロインに向かって自分の抱えている疑念を喋ってしまう。→その後すぐに誤解だとわかる。
  • 主人公、妹に断りを入れる。
  • 兄の真の目的は、主人公の力をはかることだった。この先ヒロインが危難に陥ったとき、護れる力があるのかどうか。
  • 主人公、妖怪化のリスクを厭わず、力を発揮。護れることを証明する。そしてリスクを乗り越えたことで、ふたりの絆が強まる。

 構成。割りながら今回は悩んだ。というのも今回、筋2本あって、割りにくかったんだよなぁ。まあ兄の行動にも起伏がつけられた結果なんですけど。ややこしいので兄側(対組織側)の筋はカットしてしまった。
 コンセプトは、「互いにまだ深く踏みこみあっていないカップルが、痛みを伴いながら踏みこみあって、絆を強める話」かなぁ。あとがきで西野さん本人が言ってる「純愛」というのは、まったく嘘ではないです。イラストだけ追っていくと3Pエンドみたいに見えなくもないですが(笑)一応、断ってるもんねぇ。まあ使い捨てにするようなキャラでもないので、べつにいいのですけど。
 痛みってのは、ようするに疑念をぶつけることですね。誰しも、べつに恋愛関係でなくても、自分は本当にこいつにとって親友なんだろうかとか、そういうことは考えるわけで。特に初期恋人ってのはそれが顕著ですわね。


 まあ惜しむらくは、戦闘が証明で終わっちゃってることなんだよな。カタルシスに欠けるというか、梯子をはずされた感じ。兄をラスボスにした時点で、ある意味避けられないことだったんですが。しかし勝利のために力を全開にしようとして、そして成したのに、それを思いっきり揮えないというのも……


 動機については前巻よりうまく処理できていたと思う。セックスをせがむ彼女に対して、怖れにも似た自問自答を展開して断ったりとか。
 でもまあ、あの年頃で、セックスを求められてしないのは圧倒的に変だよなぁ(苦笑) いやね、この寸止め感がある種のお約束だってことぐらい、わかってはいるよ。うん。コメディというのは「終わらない日常」がひとつのキーだから。セックスが書かれるとしたら、それはこの話が収束していくときだろう。
 でも共感性という点でいうなら、やっぱり共感はできないよな(笑) いっそ、ベタでもいいので、しようとしたらジャマが入るぐらいのほうが納得できます。
 だいたいスパンキングはできるのにセックスはしないというのはなんだ(爆)


 文章は前巻よりやや粗かったかもしれない。セリフの間にキャラ名を入れるタイミングの感覚が俺と違うので、そのへん少し戸惑った。

  • オオカミ妹:口数は少なくやや常識に欠けるが、素直な性格。体格はスレンダー。主人公を振り回すのではなく、立てる感じがある=妹的性格?
  • オオカミ兄:自分の大切なもののために自分を犠牲にすることのできる人。惚れた女の幸せのために、身も引くことも。

 新キャラ。続刊を出すということにおいて最も気を払われていた部分だと思いますが、その苦労は充分報われているんじゃないでしょうか。かなりいい線突けてると個人的には感じております。
 特に妹ですね。完全にヒロインの真逆を意識してます。うう王道だ。数学的に考えるとあとふたり、主人公に惚れてるやつを出せるわけですが。……もう本屋に出てる3巻の予告を読むあたり、今度は別ベクトルの妹を出すみたいですね。ロリ系というか。
 兄の身の引きかたは超カッコいいですね。年上の味方キャラをあまり出さないオイラとしては、いろいろ見習わなきゃなぁと思う。でも目的のための性格みたいに見える部分も若干あった、かなぁ。