「ドラゴンズ・ウィル」(榊一郎/富士見書房)

ドラゴンズ・ウィル (富士見ファンタジア文庫)

 ただのほのぼのファンタジーだと思って読みだしたので危なかった。
 産業革命期に発生する絶対的な問題、非科学的価値観の直視と評価・発展的解体を織りこんで、少女の成長における「通過儀礼」話としてまとめている。
 なんというか、うま面白かった。
 技術的な良さを感じるというか。こりゃのちに専門学校で教鞭執る人だわなぁ、と変な納得をしてしまった。
 この世すべての悪、という役割を負わされてきた「竜」をああいう逆配置的な性格にしたりとか。
 最後に赤ちゃん出して、なんか新時代性をかもし出させたりとか。
 ツンデレ女子竜……は対比を迫る意味ではよかったかな。人世界と竜世界のね。
 終章で空爆侵攻から一気に物語をまとめきったのは、強引に見るむきもあるかもしれませんが、オイラなんかはかえって手際の良さに感心しました。いやね、「畳む」ってのはそれだけ難しいんですよ。