「北京的夏」(ファンキー末吉・松本剛/講談社)

北京的夏 (講談社BOX)

 オイラが唯一持ってなかった(読めてなかった)松本さんの単行本がこのたび復刊。しかも収録作も旧版と同じということで、ある意味「難民」としては助かったのかもしれない。
 ――まあ、ちょっとお値段は(旧版より)高めだけど。
 舞台は天安門事件から1年後の北京。自分のロック道に行き詰まりを感じていたドラマーは、北京で「自由」を謳いあげる、魂をぶつけるように歌うロッカーたちに出会ってショックを受ける……ストーリーの半分ぐらい、ファンキー末吉氏の実体験らしいのですが、まあ、ロックという音楽と中国(というか中共)という国の体制が、物語としてハマるハマる。
 いまでもまだ自由を制限され人権も守られてなく検閲が横行する中国。ましてや天安門事件の記憶覚めやらぬころでみんなピリピリしていて。新しいものを持ちこんでやろうというだけでも大変なのに、反体制を謳うことが珍しくないロックンロールをやろうというのは……実際は、漫画に書かれている以上の苛烈さがあったと思われます。
 安保闘争とか学園紛争とかでもそうなんですが、オイラ、若い衆のはなつ膨大なエネルギーというものに興奮を覚えてしかたがないのですよ。自分に行動力も人を巻きこむ力もなかったがゆえ、いっそう。羨望を超えて、もはや呪いに近い。


 それはともかく、張(チャン)は結局バイorゲイセクシャルということでいいんでしょうか。彼の行動が後半の重要なポイントになっているのに、いまいち本人のことを処理されずにフェードアウトしてしまったのがちょっと残念。