「月王」(櫻井牧/富士見書房 isbn:4829126698)

 年をとってよかったなぁと思えることのひとつに、いろんなタイプの物語を楽しめるようになったことがある。それは余裕を獲得したからかもしれないし、教養を獲得したからかもしれない。
 この話は平安期の農村を舞台にした怪異方術モノなのですが、例に漏れず漢字がわりと多い。男子向けラノベで時代モノがあまり売れないのは漢字が多いせいだという話は、まことしやかに言われている話ですが、そう言われてみると硬質でとっつきにくいイメージはある。
 しかしそこはそれ、年をとってくると、いろいろわかってしまえて。
 そう。オイラは、難しい漢字は読み飛ばしても物語理解上問題ない、という常識を知っているのです。
 というわけで、時代ラノベの流れをなくさないためにも、漢字読み飛ばしてもいいんだぜ広報活動を今後は勝手にやっていこうかと思います(笑)


 恋愛のしかたが、耽美は耽美なんですが、非常に日本人的に感じました。こう、静けさのなかからじわりと思慕の情がにじんでいるというか。あの主人公どもは、恥ずかしいやつらではありますけど、しかしなにか見守っておりたくなるようなところもあります。