「君たちはどう生きるか」(吉野源三郎/岩波書店)

君たちはどう生きるか (岩波文庫)

 本当になにを思って数年前買ったのか思いだせないのだけど。とにかく読了。イメージとしては、4月の頭に道徳の教材として配られる本という感じ。
 基本的にオイラ、先生のありがたいお話などはあまり熱心に聞いてるような子ではなかったので、道徳の授業なんかは、ひとりで教材を読みふけっていた。いやね、差別とか深刻なテーマを扱いながら、なかなか読みごたえのある話が多かったんだよ。そのまま物語として捉えても充分通用するようなのがね。
 そんな昔のことを思いだしたのは、同様にこの本もまた物語として面白かったから。中学生のリアルな世界観/そこに生ずる疑問や問題を使って、わかりやすくこの世の在りかた、人間の在りかたを説いていくというのがこの本のスタイルなんですけど。描かれている中学生たちの物語というのがね、まあ面白いんだわ。特に主人公が友だちを裏切ってからの叔父さんとのやりとりには胸を打たれました。自分の犯した失敗を一生懸命リカバーしようとしたことのある人にとっては、あのくだりは平静な気持ちでは読めないはず。いろいろオーバーラップしてきちまって。
 これの初出が昭和12年というのがもうただただすごい。いいものはやっぱりいつまでも「消費」されないで残っていくんだなぁ。