書いた小説を公表していたりすると、ときどき、自分の想定・意図とはまったく異なる読まれかたをすることがあります。
 一応、「すべての『誤読』は作者の罪」という考えを信条にしている俺ではありますが。しかし所詮俺なんて小さい人間、この世に存在するすべての価値観に想像を及ばせることは不可能なわけでして。だから、本当に「そんな価値観もあるのか」と驚かされるような読まれかたをすることもあります。ごくたまにですが。
 つまり、厳密な話、『誤読』というものは完全にはこの世からなくならないのではないかと、思うのです。いかな技術を持った書き手といえども。ある程度の「価値観の範囲」を想定したなかでしか、勝負できないのではないかと。
 まあだからといって、書き手が手抜きをしていいとかそういうわけじゃありませんけどね(笑) 人の身で及ぶ範囲で、可能な限りの価値観を想定し、できうる限りの方位に対応しようとし続けることこそ書き手の宿命ではないかと。