「Under the Rose」2巻(船戸明里/幻冬舎)
近代イギリスのある貴族を舞台にした、愛憎たっぷりのビルドゥングスロマン。その2巻目。「エマ」とあわせて読めば、近代イギリスの雰囲気に浸れること間違いなし。
冬の物語編の主人公、ライナスの心理の変遷の描きかたには感心させられてしまう。紙の上に表出するモノローグでは、彼は自分を省みる自罰の言葉なんかほとんど発しない。どこまでも攻撃的で、他者を責めたてる。だが最後の最後で、彼は泣いてみせるのである。自分のしたことの哀しさに。
オイラみたいなヘタレ小説書きだと、絶対に途中のモノローグで自罰的な変化をつけさせてしまうところ、船戸さんはリアクションにだけ絞ってそれを描ききる。まぁ、ライナスが11歳にはとても見えないという欠点はあるんですけど。
不肖巻島にも、最近わかってきたことがありまして。キャラクタから読み手に印象を与えるには、百のセリフより一のリアクションなんだと。やっぱり楽で便利だから、どうしてもセリフでキャラクタを書こうとしてしまう。それはまあ、要するに、キャラクタの性格を考えてないから、性格的にそのキャラの行動を立たせる場面を考えて出せてないからってことでもあるんですけど。