「ヨイコノミライ!」2巻(きづきあきら/ぺんぎん書房)

ヨイコノミライ! (2) (Seed!comics)

 まずはじめに。
 この作品に描かれているものは、けしてきづきあきらだけが書くことができ得る「痛み」ではない。初単行本「モン・スール」(ISBN:4901978063)においては、小学生の少女の心を見事に描き出してして、自分の身内たちを驚愕させたきづき氏だが、この「ヨイコノミライ!」という作品に関してはそういうサプライズはない。いまのところは。自虐的手法を用いたオタク叩き・批判も、マイナー趣味ゆえに理解されないのも、リストカット少女も、肥大した自尊心も、自尊心を守るために他人を攻撃するのも既出だ。2巻ではついに恋愛がメインになってしまった。


 だがきづきあきらは「痛み」から離れても、マンガとしてのパワーはまったく衰えていない。パワーを維持したまま、違う方向を探っていると俺は判断する。
 今作についてはとりあえず、「オタクフィールドを舞台にしたキャラクターマンガ」として見ていくことにする。




 と、クソ硬い文章はこのへんにしてですね。
 ここからはキャラクタについて書いていきます。
 

 まずうっちー。もとい内田。1巻終了時、活躍を期待する旨を某所で書きましたが……間違いなく、彼がこのマンガで一番ヤバイです。キてます。
 コラでオナニーまでは許す。だがその写真を傷つけながらオナニーし、あまつさえ印刷して本人に送りつけるなんざ、変態そのものですよ。しかもパソコンいじってるときの目が、またなんとも。ありゃ死んでますよ? 衣笠兄弟の手伝いシーンからのギャップもあって、見事にキモいです。おめでとう(なにがだ)


 もうひとりのキ印、平松。作中では、幽霊が見えると言ったときに感じた優越感から、電波妄想虚言癖がはじまったことが示されましたが……こういう人とは絶対関わりたくないなぁ。一度バスを待ってるとき、「あなたの幸せを祈らせてくれませんか」と声をかけられたことがあるけど。逃げましたよ。
 リアルでは、平松のような容姿の腐女子はよく見かけますし(もっさり黒髪、眼鏡、眉毛太い、化粧っ気なし)、容姿だけならオイラ、かなり平松のこと好きなんですが(この世に存在する2次元メガネ少女全体の9割9分を愛する自信がある)。
 知り合いでもない同人作家の家に押しかけるは前世ごっこするは。手に負えません。ガツンと言ってやりたい。
 でも告白できただけ、オイラより人間的レベルは上ですね。あーあー。


 天原。こいつは斑目(「げんしけん」のね)に対するアンチテーゼみたいなものではないか思う。キャラ的にはほとんど同根のはずなのに、かたや作中のマスコット(女性読者からの人気ナンバーワンらしい)、かたやキモオタとして描かれている。天原は「こういう性格のやつは現実ではこんなふうに扱われているのであって、斑目みたいな扱いは絶対されないんだよ」と、暗に示してくれている感じがするのですね。
 そもそもが、「げんしけん」とは完全に逆ベクトルの話なんですけど。あっちはオタ肯定だし。


 主人公っぽい人、部長井之上。ヤケになったとたん、いきなり平松の告白を受け入れるのはどうかと。あの冷めた表情。ぞくっとする。人間は怖い。優しくも冷酷にも簡単に変われる。
 性欲全開なのはいいね。さすが男の子。というか、きづきあきらは男女問わず照れた顔を描くのがうまい。こっちまで紅潮する勢いです。
 ターゲットを絞れうんぬんの話は心に刺さりました。ダメージ大。オイラにはターゲッティングの力も欠けてるので。


 ある意味主人公青木。ついにマンガ描いてる理由が「賞金稼ぎ(新人賞荒らし)」と判明したわけですが。彼女を見ていると、この先の展開次第ではまたきづきさんらしさが見られるような気がする。被虐待児のようだし。どうなるのだろう。


 恋愛がメインと言いましたが、それよりはコミュニケーションがメインだったような気がしてきた。相手を理解するのではなく、自分をすべて明かすことで理解してもらおうとするところから始めがち、というのは耳が痛い。愛したい人は少なくて、愛されたい人ばかりがいるって書いてあったのはなんだったっけ。「コミュニケーション不全症候群」だったような。


 ストーリーとしては、こんなに早く告白するとは思いませんでした。もっと井之上、青木、平松のドス黒い三角関係を使っていくのかなと予想していたので。でも結局二股発言で、三角関係継続なんですよね。
 いまのまま進むと、青木の行動を知った平松がぶち切れて刃傷沙汰、ということは往々にしてあることですが。はてさて。




 長々と書いたうえ、中身があんまりなくてすいません。