北海道日本ハムファイターズ、大学卒業後に渡米しMLBで通算1勝をあげた多田野数人を大社ドラフト1巡目で指名

 俺と同い年の多田野は、いまさら説明するまでもなく、ネットでは有名な野球選手である。
 ドラ1確実と言われていた4年の秋、ゲイビデオ出演の過去が暴かれたことが、すべての狂いの始まりだった。
 以後、2ちゃんねるを中心にして、からかい・中傷の嵐(これは現在でも続いている)。山川純一ヤマジュン)と双璧を成す鉄板のゲイネタとして、モデルとなっている本人の感情はまったく省みられることなく、ネタが貼り続けられている。
 スキャンダルを嫌がった12球団はすべて多田野の指名を回避し、多田野は事実上、日本で野球を続ける道がなくなってしまった。
 以来、5年。
 MLBでは初先発初勝利という名誉もあげた。A-RODを50マイル台のスローボールでサードゴロに抑え、MLB公式サイトでその日のベストプレーに選ばれたこともあった。
 一方で、キリスト教保守派の影響でゲイに対して厳しい国柄もあり、自分が同性愛者ではないこと、お金ほしさにビデオ出演した事実を認める会見も行わされた。
 ただ、ここ2年は3Aでシーズンを終えており、頭打ちというか、伸び悩みのようなところもあったので、今回の指名はある程度「渡りに船」であるとも言えよう。
 思えば、不当な指名回避だった。脱税や暴行、性犯罪者まで雇っていたNPBが、犯罪でもなんでもないゲイビデオ出演者を排除することなど、つじつまの合わないことだったのだ。ただスキャンダルの嵐に巻きこまれたくなかっただけで、その日和見が、多田野の人生に大きな遠回りを強いた。


 もちろん、来年から多田野がNPBで野球をやっていこうとすれば、そこには大変な(普通の選手の何倍もの)勇気がいる。
 心無いヤジ、誹謗中傷の数々は必ず飛んでくるし、オールスターでの悪質な組織票もあるかもしれない。
 それでも、それをわかった上でなお日本に戻ってプレーするというのなら、その決断に拍手し、俺は応援したい。