朝青龍、仮病疑惑問題で2場所出場停止の処分

 かつて前田山、という横綱がおりました。前田山はケガで休場中、知人の誘いもあって日米野球の観戦に出かけました。当然、お相撲さんというのは目立ちます。ましてや外国人にとっては、初めて見る「お相撲さん」です。
 試合後、前田山はアメリカのチームの監督から握手を求められ、それに快く応じました。当然、野球の取材に来ていた報道陣にバシャバシャと撮られ――握手のシーンは、翌日の新聞に載りました。
 休場中なのに野球観戦とは不謹慎だ、けしからんと非難囂々。結局、引退に追いこまれました。
 実はこの前田山の話にはまだ続きがあって……高見山のことはみなさん、ご存知でしょうか。日本人の血のまったく入っていない初の力士、初の外国人優勝を成し遂げた、相撲史に残る力士でありますが。実はこの高見山を連れてきたのが、親方になった前田山だったのです。
 海外巡業など、積極的に相撲の国際化を進め、外国人力士隆盛の先鞭を作った前田山、その流れの最前線を引っ張る横綱が、前田山と同様に休場中の態度で処分を受けるというのは、非常に皮肉なことだと、思います。


 まあモンゴル政府主催のイベントだったので、出席を断れなかったのはやむをえないと思うんですけどね。プレーまではする必要なかったなぁと思います。観客に子どもいっぱい来てたみたいですから、自分の勇姿を見せたかったのかもしれませんが。ほんとに腰が疲労骨折してるなら、普通は断りますよね。痛くて。
 なんにせよ、これで秋場所九州場所が混沌としてきました。どっちかは白鵬優勝すると思うんですけどね。先場所みたいに5敗もするようだと、あるいは……天敵のいなくなった琴光喜が元気を出すかもしれないし、関脇以下の力士の優勝争いだってあるでしょう。現に朝青龍の休場した去年の夏は関脇だった雅山が14勝で決定戦までいきましたし。
 ただ、朝青龍という天下の大ヒールが見られないとなるのは、やはり寂しいですね。白鵬横綱ですから、負ければ座布団が舞うんでしょうけれど。ヒールの朝青龍に対して、ベビーの白鵬という形式でこの地位まで上がってきたんですから、急にヒールをやれといってもなかなか難しい話。
 朝青龍ほどの強さと憎らしさを兼ね備えたヒールは、北の湖まで遡らないといませんからね。それだけ、稀有な人材なんですよ。はやく辞めて格闘技にでも行けって言う人は絶えないですけれども。