初場所総括、ついでに朝青龍独走について考える

 トラバこそようしないが、ま、誰の影響を受けて書いた記事かは身内ならわかるでしょう……(苦笑)


 今年の大相撲も結局ドルジの優勝というベタな始まりかたをしたわけだが。
 個人的にはいろいろ、この初場所、楽しんだところはあった。閣下解説、把瑠都大ケガ、豊真将意外と健闘、玉春日7連勝後6連敗、栃煌山幕内昇進、若ノ鵬初負け越し、豊響新十両優勝、高見藤やっと幕下脱出、市原4連勝、柳川5連勝、日大山本の四股名山本山週刊現代八百長告発……悲喜劇ネタあわせていろいろ見るべきところはあった。
 見るべきところがなかったのは、役力士以上だけだったんじゃないかと思う。いやマジで。雅山やっと負け越してくれたのは嬉しかったが。5場所連続関脇が同じ顔ぶれという異常事態がようやく解消ですよ。
 大関は相変わらずだらしなくて。八百長を疑いたくなるほど、星数帳尻あわせだけはうまいという。8勝や10勝なんかで満足されたら困るわけで。横綱を狙うべき地位なのだから、せめて千秋楽まで優勝争いにからむくらいでないと。
 いまの相撲界の停滞は、ロートル大関3人衆や琴光喜のような地位を守るだけがうまいやつらが上でいつまでも溜まってるからじゃないかとオイラは思っている。


 で、朝青龍ですが。
 理事長も仰ったように、こいつにはライバルがいない。
 ライバルがいない、というとき、すぐに考えられるのは、まわりが弱すぎて相対的に最強になってるだけなんじゃないの、ということだろう。実際、ディープインパクトは圧倒的な強さで三冠を取ったが、ディープ世代の他の馬の実力に関して、その後他の世代の馬たちと走ったことによっておおかた明らかになってきている。……はっきり言って、ディープ世代はけして強い世代であったとは言えない。
 それでは、いまの関取陣は他の世代と比べて弱いのだろうか。
 個人的な認識で言わせてもらうと、答えは「NO」だ。ただしこの答えには但し書きがある。他の力士にも全盛期の力があれば、という一文がつく。
 世代世代と大きなくくりで語っていたが、相撲における世代というのはなにも、1年間ずっと対戦があれば同じ世代、というものではない。大関のなかでも最年長である魁皇朝青龍が同世代かと言われると、うなずけないところだ。
 やはり現実における世代の考えかたと同じように、プラマイ2ぐらいまでが同世代と言えるのではないか。
 で、朝青龍と近い年齢の力士を探すと、確かに現状、たいした力士は多くない。普天王とか豊真将露鵬……まだまだ若手、ホープと一応言われている連中ばかりである。もっと伸び代があるんじゃないかと、まだ成長途上なんじゃないかと見られているわけで。
 そしてその下に、琴欧洲白鵬といったホープ大関稀勢の里琴奨菊ら若手が続いている。
 では朝青龍をかつて迎え撃つ立場だった年配力士を見るとどうか。これはあるひとつの傾向でまとめられる。朝青龍と対戦する年輩力士たちは、全員、盛りをすぎている。
 魁皇なんか、最高位大関での最多優勝記録を持っていることからもわかるとおり、けして弱い力士ではない。いや、なかった。ケガや衰えが重なって、横綱に太刀打ちする力がなくなったわけだ。
 千代大海栃東にも同様のことが言える。
 ――書くのが面倒になってきたので強引にまとめよう。
 朝青龍は、世代交代の端境期にひとりだけぽつんと現れた実力者である。ゆえにライバルがいない。年輩力士は急速な衰えを前に対抗できず、同輩や後輩力士たちは、横綱の成長スピードに追いつけなかった。
 ライバルがいないというのは、ファン視点から言うと不幸なことだ。見る前から決まっている勝負ほど、楽しみのないものはない。
 朝青龍の前に優勝20回以上を達成した力士たちは全員、ライバルと呼べる相手がいた。そういう相手との息詰まる優勝決定戦を何度も制して、優勝回数を重ねていったわけである。
 かたや朝青龍の優勝は、ほとんどが14日目までに決まってしまう。
 これだけ圧倒的なのも、すべては世代交代の端境期にあるからだ。魁皇なんて1年以上前から引退が囁かれているのに、いまだに際どく勝ち越しながら現役に残っている。
 まわりが弱すぎるから最強なのではない。まわりが力のない時期に当たってしまっただけなのだ。
 誤解されないように言っておくが、オイラはなにも、朝青龍が並の世代に生まれていれば平凡な力士だったなんて言うつもりはない。彼はどの世代に生まれていてもやはり横綱だっただろう。ただ、他の世代生まれだったらあるいは千秋楽全勝決戦ができるようなライバルがいたかもしれないということを言いたいのだ。
 将来必ず朝青龍のライバルが出てくることをオイラは確信している。そのときにやっと、朝青龍の強さというものが興行的な意味でも価値を持ってくるだろう。