過疎と過密の迷宮――地域格差とYouTube

 YouTubeに置いてある動画が違法的存在であることは、ほとんどの利用者が認識していることだろう。だが利用者の数は減らず、いまも日本から200万/月以上のアクセスがあると聞く。
 これだけ利用が絶えないのは、オイラはひとつに、地域格差のせいではないかと考える。
 ネットをやってるととにかく情報は膨大に流れ入ってくるのだが、そうしたもののなかで、東京オンリーな情報だったり、関西オンリーな情報だったりするものが混じっているのは珍しくない。顕著なのはテレビコマーシャルか。NTT東日本JR東日本のCMはもちろん西日本では見れない。関東人もまた、茜丸の紫頭のおっさんを知らない。
 だがネットの情報というやつは、都会田舎にかかわらず、すべて並列・機会平等に降りてくる。どこにいても、同じものに触れることができる。まったく地域の差はない。
 田舎には住んだことのないオイラであるが、両親の実家は福井県という超田舎なので、帰省などを通じて、田舎における情報取得のひどさはそこそこ体験している。なにせ、民放が2局しかないという驚くべき県だ。この時点で、どれだけの差があるかということは想像できるだろう。そんなところでも、ネットに接続すれば東京人と同じ情報に触れられる。今期はどんなアニメが評判になっているかとかも知ることができる。
 オイラはオタクなので、こうした地域差の問題で一番気になるのは、深夜アニメのほとんどは都会でしか放映しないということだ。情報だけは等しく触れられるのに、肝心の中身には触れることができない。時間を置けば、ケーブルテレビやCSでの放送、DVDなどで触れることもできるが、いずれも有料手段だ。タダでアニメを見ている都会との不公平感は否めない。
 一方都会は都会で、深夜アニメは過密に陥っている。同時間帯で複数局のアニメが被ることは珍しくなく、レコーダーのない貧乏人はどちらか片方をの視聴をあきらめなければならなくなってしまう。それでもまだ、2つ被りまでなら救いがあるのだが、ひどいときには3つ被りという恐ろしい自体さえある。こうなると、普通のレコーダー1個のみでは対処できない。
 P2PにしろYouTubeにしろ、メディアやテレビ局やにいろいろ言われながらも利用者が減らないのは、こういうところに背景があるんだろう。まあ都会の貧乏人は本当にアニメが好きならそのうち金貯めてレコーダー3つぐらい買うかもしれないが、それでも本来、被ってさえいなければ余計な金は出さずにすんだ、という被害意識は持つかもしれない。都会でも曜日によってはすいている日もある。誰かエラい人が話しあってくれれば……なんて妄想をしたオタクもなかにはいるだろう。
 この情報全国並列社会、オイラは近い将来ローカリズムというものは段階的に駆逐されてしまうのではないかと思っている。その進化の果てはネットテレビ的なところにいくだろう。全国どこでも同じ番組を見れることのみが、地域格差を根本的に解消する手段でしかないのだから。受信地域によってどのスポンサーのコマーシャルが流れるかを変えられれば、スポンサー的にも不満はあるまい。ニュースや天気予報などの地域情報番組に関してはローカルの枠を残さなければならないが、まあなんとかなるだろう。もっともこれをやると、メディアにおける権力が東京一極集中を起こしてしまうという問題も孕んでいるのだが……関西局製作、東海局製作なども全国かき集めて平行陳列にし、視聴者に選択させる感じでもいいか。重要なのは、どこの県民でも見れるという公平さなのだから。
 特にアニメのネット配信はもっと速やかに普及していかないとダメだ。スポンサーを募ってやれば、どんなアニメでもできるんじゃないかと思う。どうせDVDの売り上げに影響が出るからとかの理由で、あまり普及しきれていないのだろうが、そんなオタクからの搾取ありきでアニメを流していては、業界が将来袋小路に陥ることは目に見えている。地方のオタクにYouTube利用されて怒るくらいなら、まず業界自らの手で地域格差の是正に努めるべきではないだろうか。