ゲシュタルト崩壊、って現象がある。字をじっと見ていたら、だんだん「こんなかたちだっけ?」と自信がなくなってくるアレである。言葉は知らなくても、こういう現象を体験した人は数多いだろう。
 そのゲシュタルト崩壊、昔からなぜか、オイラは人間に関しても感じてしまうことがある。
 例えば、鏡を見ていて「おれ、こんな顔だったっけ?」というのとか。
 あるいは仲のいい、いつもつるんでいる仲間のなかにいても「おれって、この集団のメンバーだったっけ?」みたいな。不意に、自分自身の存在に対して完全客観的になるというか。入れ物(肉体)の自分と中身(魂)の自分とが離れてしまうというか。
 だからみんなが盛り上がってる場でも、どこかで自分を客観視してしまって、冷めてしまって、結局みんなと同じようにノレなかったりとか。そういうことが珍しくない。
 もし自分のなかからひとつ性格を排除できるなら、この客観性の性格を捨ててしまいたい。そうすれば、いまよりは多少、社会的になれていた気がする。