今日、街を歩いていたら、見知らぬ人に声をかけられた。
「あの、巻島君だよね? 俺のこと憶えてる? ほら、同じ班だった……」
 どうも彼の説明によると、実に13年も前、彼とオイラは同じ空間にいたことがあるらしい。
 だが、こっちは彼のことをまったく憶えていなかった。いろいろ説明してくれたが、残念ながらオイラの頭にはひとかけらも彼のことは残っていなかった。
 ……なんというか、こういうとき妙に罪悪感を覚えるのはなぜだろう。
 まあ、どうせ今日のことはすぐに忘れてしまうんだろう。彼のことをまったく憶えていなかったのと同じように。いちいち引っかかっておびえてしまうのはオイラの悪い癖である。


 しかし、いまのオイラの顔を見て、13年前のオイラの顔と一致させられたというのはどうなんだろう。
 13年間もまったくオイラの容姿が変わってないのだとしたら、それはそれで悲しいかもしれない。小学生のころ、フケ顔だと言われていたせいもあるのかないのか。