硬式野球部の女子部員に関する問題

 大臣のひょんな見解表明に端を発したこの問題。
 実は、取りうる結論というのはわりとはっきりしていると思う。


 まず女子硬式野球の普及、というか高等学校における女子硬式野球部の増加をはかること。
 近代のスポーツ、特に球技で、男女混成で行われているものはほとんどない。あったとしてもそれはチーム内の男女比、人数をきっちり規定したものであって、つまり最初から「混成競技」であることを前提にしたものばかり。テニスや卓球のミックスダブルスとかね。
 それではなぜ、女子である彼女たちは近代スポーツの常識を超えてまで硬式野球部に入ろうとするのか。
 単純に女子野球の普及が足りていない、ということもあるとは思う。でもそれ以上に、オイラは「甲子園」なるものが神格化され美化され誇大になりすぎてしまったせいであると思う。
 いまや巨大な利権大会と化した「甲子園」は高校生の部活動の名のもとに「感動」を生み出し提供し続けるマシーンのようなものになりさがっている。……一応言っておくけれど、高校球児たちのメンタルが昔と変質してしまった、ということではない。彼らを取り巻く大人たちの心内が、利権のまばゆさに当てられてひどく歪んで変質してしまったのだ。
 マスコミ様によって「感動」の舞台としてスポットライトを当てられ続ける「甲子園」。そうした報道を見続けて育った野球少女たちが「甲子園」に憧れを持たないはずはない。
 かくして野球少女たちは、自分が在学中のうちにひょっとしたら規定が改正されるんじゃないか、という淡すぎる期待を持って、男子にまざって硬式野球部に入るのだ。
 けれどやはり近代スポーツの常道は男女分割。どれほど「甲子園」を望んでも、女子生徒には永遠に扉は開かれない。


 結局、全国高等学校女子硬式野球大会を甲子園球場で開催するぐらいしか、女子生徒をプレイヤーとして甲子園に立たせる方法はないと思う。
 ただし、これもハードルは非常に高い。
 野球よりも女子の活動が盛んな高校女子サッカーでさえ、全国大会では国立競技場は使われていない。
 思えば、会場に男女差がない他の球技は、ほとんどが女子が国際大会の実績で男子に匹敵、あるいは凌駕する成績を収めてきた球技ばかりである。
 国際大会もほとんど整備されていない女子野球では、野球少女たちが甲子園に立つことはこれから先も極めて難しいのではないか。