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昨日まで持ち上げるようなことを書いてきていてアレなのですが、実はオイラ、ディープインパクトという馬はあまり好きではなかったりする。
なぜなら、彼はエリートすぎるからだ。
一度も負けたことがなく、一度も二番人気以下になることがなく。鞍上は日本のトップジョッキー。父親はリーディングサイアーのトップを死ぬまで守り続けた大種牡馬。
関西テレビの馬場アナウンサーの発した、「日本近代競馬の結晶」という表現は、まことに的確なものだ。近代の範囲を、ここ十数年に限るとするならば。特に血統の面で。
競馬のアイドルホースには、「物語」がないとつまらないとオイラは個人的に勝手に思っている。
ハイセイコーはけっして傍系の血統ではなかったが、地方から中央へ殴りこみをかけ、世の中の共感を誘った。同じく地方から殴りこみにきたオグリキャップは、血統も傍系で、ついでにムチャクチャなローテの使われかたをして世間の同情を誘った。
あるいはTTGのように、抜きつ抜かれつのライバルストーリーとして、見ている者を引きこむ馬たちもいた。
ディープインパクトには、そうした物語がない。敗戦や挫折からの復活も、辺境からの挑戦も、傍系の奇跡も、なにもない。ついでに言えば血統も輸入血統なので、親の顔を思い浮かべて重ね見る楽しみもない。
ただ、極めて強い。
もっとも、競馬はレースなので、強いということもひとつのエンターテイン要素なのでしょうが。朝青龍が負けるのを期待して座布団を握り締めている客がいるのと同じように、強すぎるディープも今後ヒールにならないとも限らないわけで。
最近は判官贔屓でなく、日本人も勝ち馬に乗る兆候が強くなってきているようですけど。どうなんですかね。最初から主人公が最強の漫画読んで面白いかどうかという議論に似ているかもしれない。
まあディープインパクト最大の不幸は、やはりライバルがいなかったことでしょう。